強欲 鈴木義彦に残された選択肢(1)

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[海外ファンドで使途不明金9億円]

エフアールで鈴木の側近として動いてきた天野裕は、鈴木が親和銀行をめぐる不正融資事件で逮捕された後、エフアールがなが多、クロニクルと社名を変えても一貫して“独裁”を維持してきたことが大きな要因となったのか、平成23年8月3日、都心の京王プラザホテルの客室で、首を吊った状態で遺体が発見された(当時は会長)一部には「何者かが天野氏を吊るした後に足を引っ張った」という恐ろしげな指摘もあるが、天野の死には余りに謎が多いのも事実だった。
会社の公式の発表は「8月3日午前5時、急性心不全により自宅で死亡」としたが、事実は明らかに違っていた。なぜ、このような違いが起きたのか。クロニクルは曲がりなりにもジャスダックに上場する企業だったから、企業としての信用を憚ったのは良く分かるが、余りのギャップの大きさに却って不信感が募ることになった。しかし、クロニクルが具体的なコメントを出すことは無かった。
天野は、会社では投資事業を専権事項にして具体的な情報を社内外に開示することは無かったという。鈴木が、親和銀行不正融資事件で逮捕されたことでエフアールの代表権を失うとともに株主名簿からも名を消し、さらに平成12年に取締役を退いたことで鈴木とエフアールの関係は無くなったと業界には受け取られたが、それはあくまでも表向きのことに過ぎず、天野には鈴木の存在を無視することなど出来なかった。
それ故、なが多やクロニクルで発表されるユーロ債(CB)の発行や第三者割当増資が、実は全て鈴木の指示(意向)の下に実行されていた事実を一部の人間に明かすことにしたことがトラブルの一つといわれている。
しかし、天野が死亡すると、続々と使途不明金が発覚し、平成24年1月、過去の会計処理と有価証券報告書虚偽記載の疑義に関する事実関係の調査をするとして、第三者委員会が立ち上げられた。
すると、SECが、天野がシンガポールにファンドを3個組成して合計9億円もの資金を流し、ファンドから自身に対して資金を還流して個人的な流用を計画していたとして金融庁に課徴金を課すよう勧告していたという情報も表面化した。
問題は「個人的な流用」で、これまでの情報ではファンドの組成から資金の還流が天野単独による犯罪行為とみなされた模様だが、天野の背後には常に鈴木の存在があったことを考えると、還流資金が一人天野の私的流用と断定していいのかどうか強く疑われる。鈴木が天野の背後でエフアールに関わってきた事実を、社内の人間は少なからず承知していた。

そもそも3個のファンドをシンガポールに組成して行う投資事業とは何だったのか? その情報すらクロニクルは公表していなかったが、それこそ鈴木の本領と考えるのが自然で、天野は「エフアール 代表取締役」という名義(肩書き)を使われた可能性が高いのだ。天野だけではない。今回の事件では10人以上が事件に巻き込まれ自殺や不審死さらに数人が行方知れずになっているだけに、鈴木の悪事を許せないと関係者は揃って口にする。
第三者委員会が調査して判明した使途不明金は平成20年からとなっていたが、それは、鈴木が平成18年頃から旧アポロインベストメントを軸にしてステラ・グループを組織し、同興紡績ほかいくつもの企業買収を繰り返し、あるいは業務提携を活発化させた時期と重なっていた。
ステラ・グループへの変貌と企業活動に要した資金を鈴木が調達するに当たって、クロニクル(天野)が利用された、と考えると、天野の自殺はこれまでに伝えられてきたものとは全く違っていた。(以下次号)

2020.09.08
     

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