失踪12年でも消えない「佐藤元夫」の犯罪(1)

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〔金主を騙して仕入れた不動産を無断で売却〕

佐藤元夫という不動産業者が会社経営者の前から姿を消してから12年以上が過ぎた。もちろん、姿を消すにはそれだけの理由があって、佐藤の場合には不動産の仕入れで会社経営者から多額の資金を借り受けながら、不動産を取得後に内緒で販売をして販売代金を着服横領した総額が平成14年までの6年間で約8億5000万円という巨額に膨らんでいたこと。そのために「債務弁済契約公正証書」を作成するに当たって会社経営者が佐藤に「金額が大きくなっているので」と言うと、佐藤は法人契約の生命保険を担保にすると言って、立て続けに6社と契約しながら当初は佐藤が真面目に保険料を支払ったが、間もなくして滞りだし、会社経営者が佐藤に頼まれ立替払いをするようになった揚げ句、平成19年9月、会社経営者には無断で保険会社に解約を強硬に申し入れて返戻金を受け取ったこと等ほかにもある。

佐藤元夫は不動産業者といっても、競売で落札した物件を販売する業者で、その市場は不動産業界では特殊ではあったが、平成の時代に入ってバブル景気が崩壊すると、金融機関が一斉に事業用地、個人の住宅を問わず債権回収のために競売にかけるという事態が起きた。“貸し剥がし”という言葉がニュースで流れるほどの社会問題にもなったが、競売不動産の市場が大きく膨らんだ結果、佐藤のような専従業者も増えた。

とはいえ、佐藤が業界でどれほどの実積を有していたかは分からないが、平成8年頃に新聞の折り込み広告で宣伝したのがきっかけで会社経営者との接点ができたという。

最初に連絡を取ったのは、競売不動産の取得に興味を持っていた会社経営者だったが、会社経営者のオフィスに現れるたびに佐藤の方が積極的になり、何度か面談を重ねたときに「一緒にやりませんか」と持ちかけるようになったという。いくつかの入札物件を佐藤が提案して、会社経営者が実際に資金を出した。そして落札した不動産を佐藤が販売して上がった利益を分配するという約束になっていた。

この当時、佐藤は毎週火曜日の午後4時に会社経営者を訪ねて定期的に打ち合わせを行っていたので、会社経営者も安心して任せ未販売の不動産については佐藤が代表を務める会社の所有としていたという。ところが、そのうちの一つであった東京赤羽のビルについて、佐藤の悪事が発覚した。事情を知る関係者によると「この物件は入札価格が1億数千万円で、落札した後の所有名義は佐藤の会社にしていた。毎月、数件の店子から佐藤が賃料を集金して会社経営者に持参していたが、数ヵ月後に会社経営者の友人がビルを買うことになったので佐藤に売買準備の指示をした。しかし、売買契約の当日になって、佐藤が『実はあのビルはすでに売却して、売上代金を横領しました』と白状した」(関係者)という。佐藤は必死になって謝罪し、それこそ額を床にこすり付けるようにしながら、「これからしっかり仕事をして、必ず返済しますので許してください」と懇願したことから、会社経営者は警察に告訴することだけは踏み止まったという。

しかし、この事件発覚から4年、佐藤は会社経営者に対して悪事を働き続けることになる。佐藤は時には競売に係る「供託金」が必要という名目で横領を重ねたのである。(以下次号)

2019.12.16
     

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