読者から数多く寄せられている投稿の中で、どうしても鈴木義彦と長谷川幸雄元弁護士に答えてもらいたい、鈴木と長谷川には真実を語ってほしいという趣旨のご意見、ご質問が多いため、一部は本誌で要約したが「鈴木義彦及び長谷川幸雄元弁護士への質問状」としてお届けする。もとより、本誌の特集記事に一度も反論していない鈴木が真正面から答えるとは思えないが、参考までに本誌の把握している事実関係を述べることにした。
1 宝林株800万株の取得資金3億円は誰が出したのか?
〔本誌〕鈴木の主張は三転も四転もしたが、平成18年10月16日の和解協議の場では、鈴木自身がA氏が出したことを認めた。これは鈴木が認めた数少ない事実の一つである。ところが、裁判官がそれさえも採用しなかったのはあまりに不自然だった。この事実認定を誤らなければ、平成11年7月30日の15億円の授受についてもA氏への返済に充てるなどという誤った判決にはならなかったはずで、裁判官が明らかにおかしいと言わざるを得ない。
2 親和銀行事件で逮捕される3日前にA氏から逮捕情報を聞いて8000万円を借りた時、土下座して涙まで流して「このご恩は一生忘れません」と言ったが、それは演技だったのか?
〔本誌〕鈴木がA氏の会社を訪ねた目的がピンクダイヤの持ち出しにあり、「念書」まで用意していたことで分かる。8000万円の借用書で返済日を10日以内としていたが、その約束を実行することは事実上不可能であることをA氏は承知で鈴木を助けた。そうした機微が鈴木にはどうして分からないのか。A氏から金を借り、ピンクダイヤを引き出すために土下座をして涙を流して懇願し、揚げ句「西さんには内緒にしてください」と頼んだ。
3 A氏と同じ名目で故西義輝の奥さんからも1800万円を借りているが、借用書を奥さんに渡さなかったのは返す気がなかったからか?
〔本誌〕鈴木は金を借りる際に可能な限り書面を残さない、署名をしない等を徹底していて、後でトラブルになることが頻繁にあったと側近は言う。西の奥さんからの借用でもその性癖が出た。つまり返す気などさらさらなかったのではないか。
4 A氏に言い値の3億円で買ってもらっていたピンクダイヤモンドと絵画を平成10年5月28日に「売らせてほしい」と言って持ち出したのは逮捕されるのが確実と実感して金に換えようと思ったのか? 絵画は別の債権者に担保として入れていたことが後日判明したが、これも、現品を返すことも販売代金を払うことも考えていなかったのか? ピンクダイヤを持ち出すにあたって「念書」(預かり書)を用意していたが、天野裕(当時エフアール常務)は、鈴木が白紙の右下に「ここに名前を書け」と指示されて書いたと言っていたが、エフアールの名前を使う時には、いつもそんな調子か? エフアールの代表取締役として、外部の取引先に文句を言われたことはなかったのか?
〔本誌〕A氏の耳に逮捕情報が入っていたということは、鈴木はすでに警視庁の監視下に置かれ、事情聴取を受け逮捕される実感を持っていた可能性が高い。そうした中で、A氏に言い値で買ってもらっていたピンクダイヤを「売らせてほしい」と言って「念書」まで用意するのは、おかしな話である。しかも、トラブルが発生した場合には会社の責任にして、自分の逃げ道を作っている。鈴木の発想は卑怯で悪質だ。そもそも逮捕される人間に金を貸したり、ピンクダイヤの販売預託に応じるような人間がA氏のほかにいるはずがない。世の中広しと言えどもそこまでやってくれる人は一人もいない。ここまでやってもらった人間に対して鈴木はよく考えるべきだ。
5 親和銀行事件で逮捕起訴されて後に保釈された際、何故家族の住む自宅に帰らなかったのか? 愛人宅では朝から痛飲して自暴自棄に陥っていたのか?
〔本誌〕鈴木は逮捕直前に西にエフアールの存続と愛人と子供のことを頼んでおり、西は天野裕(当時常務)と共にエフアールの債権者との交渉を続ける一方で愛人宅には毎月50万円~60万円を届けながら世話を焼いていた(この金もA氏が出している)が、鈴木が保釈後に愛人宅に身を寄せたのは、債権者から身を隠すことにあったことが考えられるが、刑事被告人となり有罪での服役となれば、再起はほとんど見込めなかった。西からA氏を紹介してもらって、A氏に事実上高利の債務の肩代わり返済をしてもらい、最悪の状況から救われたはずだ。
6 西が宝林の筆頭株主が持ち株800万株を手放すという情報を聞いたのは平成11年2月頃だったが、西からその話を聞いて、どういう反応を示したのか?
〔本誌〕西が残したレポートによると、宝林が倒産する可能性は無いという調査結果が出て、株式の取得に前向きとなったが、鈴木が「今の自分には資金の用意もできないし調達する当てもない」と言うので、西が「A氏に相談して、何とかする」と言い、実際にもA氏から3億円の借り入れができ、西が売買交渉に入ることになった。この経緯からも鈴木は執行猶予の身であったので全く身動きできない状況にあったことが分かる。
7 西が宝林株の取得を決めたとき、西とどのような計画を練ったのか?
〔本誌〕西は宝林株の取得に当たり、証券会社の平池某課長との間でユーロ円建転換社債の発行により外資系投資会社が発行株を引き受け、取得した株を市場で高値売りすれば利益は外資系投資会社名義で確保できる、というシナリオをつくり、それを鈴木に相談したという。すると、鈴木は、外資系投資会社の手配、および外資系投資会社による宝林株の売買契約は自分の方でやると言った。このことから分かるように、鈴木は取得する宝林株を自らの手中に置くために売買契約を鈴木自身が差配することにしたのだ。一番肝心の部分をコントロールして鈴木が主導権を握ろうとしていることに西は気づいていなかったのではないか。西は鈴木が刑事被告人であるため宝林株売買に関与している事実を隠すことに専念したようで、交渉の場(特に売買価格 1株37円)を切り盛りした。
8 平成11年7月8日にA氏の会社を訪ねたのは、株取引の資金支援依頼だったが、その時は誰がA氏を説得したのか?
〔本誌〕平成11年5月31日に宝林株800万株の売買契約が成立して後、西と鈴木は市場で宝林の株価を高値に誘導しようと図ったようだが、利益を確保するまでには至らず、資金も安定的に確保できなかったことから西がA氏に相談しようと言った。鈴木は「社長には西会長も私も多額の借金をしているから、金を出してくれとは言えないし、無理ではないか」と弱気な言葉を返したが、西が「ともかく当たってみるしかない」と言ってA氏に相談することになった。同年7月8日、西と鈴木がA氏の会社を訪ねた。資金支援要請の口火を切ったのは西だったが、実際に熱弁を振るってA氏を説得に係ったのは鈴木だった。「証券市場では、ここ3、4年で20~30億の授業料を払ってきているので、絶対に自信があります」「それに、これが上手くいかないと、私も西会長も社長に返済ができません」等々と言う鈴木の話を聞いて、A氏は鈴木と西の依頼に応じ資金支援を承諾した。すると、西が「今日のことを書類にしておきましょう」と言って、西が書面を作成した。それが「合意書」である。
9 「合意書」を交わす際に、株取引は宝林株くらいしか頭になかったのか?また書面の項目の中に「今後の全ての株取引」とあるが、2人は株取りきは買い支え資金が潤沢にあれば勝てるという確証があった、と言うことか?
〔本誌〕「合意書」の銘柄欄は空欄であったが、鈴木は、宝林株に始まりその後も次々に銘柄を仕掛けていく中で、この「合意書」を作成するのは飽くまで3人の秘密であるから、自分たちが仕掛ける銘柄は万が一にも外部に知られたくない、という説明だった。鈴木は特にこの点を強調していた。そしてA氏、西、鈴木の3人がお互いに責任を果たし、もし「合意書」に違反する行為があれば、その者の取り分はなく、またこの「合意書」の効力は今後の株取引の全てに及ぶという条項が盛り込まれた。
10 西から紹介を受けてA氏と会って間もなく融資を受けることになったが、A氏が要求もしないのにエフアールの手形を担保に出したのは何故だったのか? しかも融通手形を常用するなんて粉飾の典型だから、その当時、エフアールが経営危機に陥っていること、従って同社の手形に担保価値がなかったことはA氏に説明したのか?
〔本誌〕エフアールはすでに経営危機に陥り、どの金融機関からも融資を受けられないどころか10日で1割以上の金利を取る金融会社からでさえ相手にされなかった状況にあった。それ故、鈴木が手形を持ち込んだのは、A氏から融資を継続的にしかも頻繁に受けるための工作ではなかったか。手形は商行為を伴わない融通手形で、発覚すればエフアールはすぐにも上場廃止の憂き目にあうため、西はA氏に「手形は絶対に金融機関に回さないでください」と言う書面を渡していた。A氏は「こんなもの(手形)は必要ない」と言っていたが、貸付の金額が分からなくならないために預かった程度で、信用だけで貸していた。それは、A氏が逮捕前に8000万円を貸した事でも分かるはずだ。
11 平成9年10月15日に3億円をA氏から借りたが、何に使ったのか? 主債務者をエフアールにしたのは、後で「エフアールに請求しろ」という積りだったのか? A氏から借りるときに西が同行したのか?
〔本誌〕もちろん、西は同行していた。A氏が「借主がエフアールになっているが?」と尋ねると、鈴木が「書き直します」と言ったが、A氏は双方が分かっていることだから、このままでも良いと言った。それはA氏が西から鈴木への融資を頼まれた当初から、鈴木個人への貸付ということを3者が分かっていたことである。
鈴木がA氏に融資を依頼する際に、あらかじめ借用書や念書などの書面を用意しているのは何か思惑が隠れているのではないか。3億円を借りる際の借用書には1億円の証券を担保にすることが但し書きに書かれていたが、その後、西が「鈴木の資金繰りで使わせてあげてくれませんか」という依頼をしてきて、A氏が応じたため無担保状態になった。A氏はもともと借り手が返済すると信用して担保を要求することはなかったから、鈴木の資金繰りに協力すると考えていただけであった。鈴木は借用書に金利年36%と書いていたが、その後、A氏は年15%の金利(遅延損害金は年30%)で十分だと言って書類を西に渡したくらいだった。(以下次号)