[裁判所に対し溢れ返る批判 疑問だらけの裁判官]
裁判官の実態を明らかにする書籍が少なからず出版されているが、「疑問だらけの裁判官」というキーワードでネット検索すると、問題判決を実例として取り上げて裁判官の姿勢を問い、原因を探る内容が描かれているので、いくつかの例を引用する。
『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』ほか『民事訴訟の本質と諸相』『民事保全法』など多数の著書を上梓している瀬木比呂志氏は1979年以降裁判官として東京地裁、最高裁等に勤務して来た経験から「日本の裁判所には、戦前と何ら変わりのない上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキーが存在して」いて、その結果、「何らかの意味で上層部の気に入らない判決」あるいは「論文を書いたから」という理由で突然左遷されるという。異動の辞令を受けた裁判官は何故左遷されたのかという基準が分からず、また、どの判決文によって反感を買ったのかを推測するしかないから、いつ報復されるかも分からない不安に駆られるために、多くの裁判官は上層部の顔色ばかり窺っている、というのだ。
「判決の内容は間違っていなくても、上層部の気に入らない判決を書いたという理由で人事に影響する。裁判所には“自分の意見を自由に言えない”といった空気がまん延しているので、組織が硬直してしまっている」
と瀬木氏は裁判所の状況を憂慮している。
「裁判所の服務規定は明治20年(1888年)に作られたもので、休職はもちろん、正式な有給休暇の制度すらない」「かつての裁判所は、平均的構成員に一定の能力と識見はあったので「優良企業」だった」が、今の状況では「ブラック企業」と呼ばれても仕方がないという。(以上ITmediaオンラインでのインタビューより)
「いい裁判官とは? 普通に考えれば、質の高い判決文を書ける裁判官のことだが、実際の評価基準がそうだと思ったら大間違い」と言い、その理由として「裁判官の人事評価の基準は、『どんな判決文を書いたか』ではなく『何件終了させたか』です」と中堅弁護士がコメントしている。
「裁判所では、毎月月初に前月末の「未済件数」が配られる。裁判官の個人名は記されず、「第○部○係、○件」とあるが、どの裁判官がどの事件を抱えているかは周知の事実。前月の件数との差し引きで、誰がどれだけ手掛けたかがすべてわかる」
と言うのだ。また中堅弁護士もPRESIDENT誌( 2012年12月3日号)に次のような一文を寄せている。
「事実上、これが彼らの勤務評定。判決文を何百ページ書こうが、単に和解で終わらせようが、1件は1件。和解調書は書記官がつくるから、同じ1件でも仕事はすべて書記官に押し付けることができる」
本来、裁判官は「準備書面を読んで、事実関係を整理し、理由と結論を書く」べきとしながら、「きちんとした判決を書けない裁判官が、準備書面をコピー&ペーストして判決文にしてしまうのが横行している」(前出瀬木氏)というが、本稿で問題にしている裁判官も「合意書」の有効性や実行性については鈴木側の主張を丸呑みした格好で西や紀井の陳述を軽んじたり無視をして否定した。さらに東京高裁の裁判官に至っては、第二審として独自の検証をせず、見解も示さないまま、ただ地裁判決文の誤字・脱字などの誤りの訂正をしただけという、余りにお粗末な判決を平然と出した。貸金返還請求訴訟の判決が誤審を重ねた揚げ句の誤判であるとする所以だ。(以下次号)