〔鈴木の報復を怖れる西義輝の息子〕
これまでに触れてきた事実(真実)は、全て多くの裏付けに基づいたものである。鈴木には海外に巨額の資金を隠匿しているという疑惑が以前からあり、それがここにきて急に浮上することになった理由は、ほかでもなく関係者全員が、鈴木が裁判に敗訴すると思っていたが、逆の結果になったために、それぞれが精査し始めた点にある。
鈴木においては、裁判におけるいくつもの虚偽証言が明確になっているだけでなく、裁判に未提出の証拠類(10本以上の録音テープ、預り証や借用者ほか多くの書類等)もある中で、それらが次第にマスコミにおいても共有されつつある。ちなみに鈴木の関係者の中には、鈴木の報復を恐れて口を噤んでいる者も何人もいるが、西が香港に渡航する際に唯一同行した子息、内河陽一郎もその一人である。
陽一郎は父親の無念を考え、先頭に立って関係者にお願いする立場のはずだが、A氏が提起した訴訟において「自分の名前は公表しないで欲しい」との要請をしており、西の関係者もそれに沿った対応をしたが、陽一郎は、勤務する某保険会社のコンプライアンスと鈴木の報復が怖いと言って、関係者の多くが「鈴木は絶対に許せない」という意思で一致して協力しているのを横目に一切の協力を拒んでいる。そしてもう一人、西の部下だった水野恵介も司法書士の資格を西の会社で取らせてもらいながら、西への恩義を忘れたかのように思われる。
「西が香港で殺されかけたのを身近で実感したのは陽一郎だった。何より陽一郎は、西の部下の水野とともに西の指示でいくつもの書面を代筆し、鈴木との株取引や日常の関係をよく承知していたはずだから、陽一郎や水野が、西が鈴木の犠牲になって東京地検に逮捕され有罪判決を受けたことや、鈴木や青田の関係者に尾行されて神経を尖らせた揚げ句に自殺をしてしまった無念さ、鈴木への恨みを共有しないということが不可解でならない。何と言っても実父の無念さを考え、多くの関係者に礼の言葉があってしかるべきだ」と口を揃える。
もう一つの理由に陽一郎が挙げるコンプライアンスだが、陽一郎が保険会社に就職するに当たって、当然身上調査が行われたと推測されるが、実父西義輝が相場操縦の容疑で逮捕され有罪となり前科がついたこと、さらに鈴木に追い詰められて自殺した事実を知れば、会社としてのコンプライアンスを気にして鈴木への対応で「関係するな」と言う上司はいないはずだ。まして、仮に陽一郎が会社の意向に沿わず鈴木に対峙したからと言って、それで陽一郎を責めることはできるはずがない。
「西が自殺した後、A氏は西の家族のために複数の債権者を説得し、億円単位の債務を解決させた。A氏は西に総額で323億円もの資金を出し、その全額と言っていい金が焦げ付いたままだが、A氏は何も言わずに来た。そうした実情を知れば、会社を辞めさせられることにはならないはずだ」と、多くの関係者が陽一郎の人間性に大きな疑問を感じている。裁判で判決は出ていても、鈴木をめぐるトラブルは依然として収束しておらず、却って周囲の関心が高まったといえる。(以下次号)