強欲 鈴木義彦に残された選択肢(6)

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〔鈴木が「私一人が作った金」と暴言〕

さらに裁判官にも目を向けると、裁判長がまとめ上げた判決はA氏の主張を退けるものとなったが、極めて不可解なことは二転三転した鈴木の主張についての記述が判決ではほとんど言及されなかったという点である。

特に、平成14年6月27日に鈴木と西がA氏に宛てて作成した「借用書」について、鈴木は「西に返済金として10億円渡したのか?」と聞かれて「(そのような事実は)ありません」と答えただけでなく、「当日はA氏と西には会っていない」とまで答えた。しかし、「借用書」の原本には鈴木の直筆による署名と指印があり、当日の確定日付も取ってあった。また平成18年10月16日の「和解書」作成の際に、鈴木がA氏に「2年以内に20億円を支払う」と言った事実も否定して「言っていない」と答え、20億円についても以前は贈与と言っていた。これも西が録取した音源に残っていた。主張を疑うべきは原告のA氏よりも被告の鈴木であったはずだが、裁判官はそうした事実に目を向けようともしなかった。

裁判官による審理への取り組みには大きな疑問がある。先に触れたピンクダイヤと絵画、高級時計の詐欺横領行為について、「ピンクダイヤや絵画の販売受託はエフアールで、鈴木個人ではない」としたり、「上代価格が45億円の時計を4億円で販売委託するのは経済的合理性にそぐわない」として、鈴木が約束した総額7億4000万円の支払債務を認めなかった。しかし、ピンクダイヤ持ち出しの際の念書や、バセロンの高級時計3セット(6本)で6億円を借り受けた事実をどうやって説明できると言うのか。

株取引で獲得した利益についても、鈴木はA氏に送った手紙の中で「私一人で作った金」と書いているが、株取引での巨額の利益獲得はすべて鈴木の株式相場における経験や知識、情報、そして人脈が総動員された結果であると言わんとしていると思われる。だが、鈴木の大きな過ちは株価の買い支え資金を西に請われるままに提供した金主のA氏、そして市場で実際に株の売り買いを繰り返して高値誘導を実行した西がいたからこその協力体制、つまりは「合意書」による株取引がすべての始まりであり、A氏と西、鈴木の強力な信頼関係が前提であったことを全く無視していることだった。

それを裏付けたのがエフアールの決算対策のためにA氏が交付した「確認書」を鈴木が悪用して「15億円を支払い『確認書』の交付を受けたので、(A氏への)債務は完済した」と主張したことや、西が志村化工(現エスサイエンス)の相場操縦容疑で東京地検に逮捕された際に、鈴木が西に土下座しながら「私の関与は絶対に秘匿してください」と言って命乞いをした結果、西が取り調べで黙秘を貫いたので鈴木は首の皮一枚で逮捕を免れた。しかし、西が保釈されて1年も満たないうちに鈴木が西に縁切りを宣言したことだった。

平成9年から同10年当時、鈴木(エフアール)が資金繰りに窮し10日で1割以上の金利でも借金できずに経営破たんして上場廃止となる可能性は高く、鈴木自身も親和銀行事件で逮捕、起訴されるという事態が起きたために自己破産あるいは自殺の選択肢しか残されていなかった。それを救ったのが西でありA氏であったが、鈴木がそのことに何の恩義も感じていなかったとすれば、もはや“人非人”の類でしかない。

人が窮地に陥っているのを見過ごしにはできないというA氏の性格、情愛を鈴木は見抜いて、それを逆手に取った典型的な例がいくつも見られるが、鈴木には利用できる者を徹底的に利用し、用済みとなれば平然と切り捨てる性格が際立っていたのである。

鈴木がいかに悪業に長けているか、読者も存分に実感したのではないか。金銭的な利害に絡むトラブルは、ほとんど全て鈴木に原因があり、トラブルに巻き込まれた当事者たちの多くが自殺に追い込まれたり不審な死を遂げ、あるいは行方不明になる者もいれば霜見誠夫妻のように殺人事件に巻き込まれる事件さえ起きたことから、鈴木という男を絶対に許すことはできないと考えている関係者は想像以上に多く、また読者からも圧倒的な反響が寄せられているのだ。特に、鈴木は「和解書」作成後に送った2通の手紙で少しは感謝の気持ちを表現していたが、その後の対応が掌を返したようになったのは青田の影響が大きいのではないか、という声が高まっている。

人に危害を加えてでも目的を達成しようとする人間がいることに気づく。しかし、鈴木のように人との日常的な関係を可能な限り遮断しておいて、自分が必要と思った時に近づいてくる人間には防御のしようもなく、いつの間にか受け入れてしまうのではないか。そして、事が終わってみると、鈴木から多大な実害を被らされ、それを取り戻そうとして躍起になると、鈴木は獲得した利得を独占するために相手が命の危険さえ実感するほど逆襲する。

鈴木は、そのような生き方を繰り返して来た男なのだ。その根底には大きな利得を得ることしかなく、考え得るリスクは予め分散するとか誰かに集中させるかして、自分は火の粉を浴びないところに身を置いている。違法であることを承知で人を巻き込み、いざとなればその人間に罪をかぶせて逃げ延びればいい。鈴木は西や西田との株取引を通じて、まさにそれを実践した。今は、1000億円を超える利益を独り占めにしてのうのうと生きているが、そんな男を、決して許してはいけない。すべての神経を集中して知恵を絞り、あらゆる手段を講じてでも追い詰め、鈴木が自身でやったことの責任を取らせることでこそ最良の結末を迎えることができるに違いない。

本誌でも鈴木にかかる連載を始めて以来、反響は大きく、多くが「鈴木を許せない」とか「検察や国税は何故動かないのか」というコメントを寄せて来ている。中には「鈴木は地獄に堕ちろ!!」といった過激なものもあるが、誤解を怖れずに言えば、鈴木義彦という男が史上稀に見る悪性の持ち主であることを伝えんとする記事の趣旨に共鳴しているからに違いないと考える。

鈴木の金銭に対する強欲さは、鈴木に関わった関係者たちに犠牲を強いることで満たされるという構図になっている。「鈴木と関わっても付き合いは長く続かず、せいぜい1年か2年で限界が来る」とは関わった誰にも共通した認識になっているが、その大半の原因が鈴木による利益の独り占めにあった。

貸金返還請求訴訟はA氏の主張が退けられるという余りに不可解としか言いようがない結果となったが、だからといって鈴木の主張が認められたと考えるのは大間違いで、鈴木による違法な行為で1000億円を超える巨額資金が海外で隠匿されているという疑惑は、これまで見てきたようにさらに深まって確証にまでなっている。再審請求のハードルが極めて高いのは分かるが、せめて地裁の裁判長を務めた品田幸男裁判官には万人が納得する説明義務があるはずだ、という声が報道記者からも寄せられており、また本誌にアクセスしている読者は国内に留まらず、海外諸国でも特に香港、中国、シンガポールほかフランス、ドイツ、スイス、アメリカなどから頻繁に閲覧があると同時にさまざまなコメントや情報も寄せてきているため、それらの情報を隈なく精査しつつ深く掘り下げた上で今後も記事化を進めていく。(以下次号)

2020.09.08
     

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