佐藤元夫は3年ほど前の令和元年に死亡した。優良と思われる競売物件を落札して、高く転売するのが得意な不動産業者だったが、やっていることは悪質な詐欺行為ばかりだった。落札した物件を、債権者には無断で売却して8億円の被害を出したり、寸借で金銭を騙し取るのが常態化していて、落札物件の占有者を立ち退かせるためとか、いくつもの虚偽の理由を持ち出しては債権者から何回も100万円単位の資金を預かり着服を繰り返した。
佐藤は悪事を働いて横領着服を繰り返し、それが露見すると必死になって謝罪するが、しばらくすると、また悪事を繰り返す。平成14年8月22日、債権者は佐藤が働いた悪事で横領着服した金額を全て合算して、8億5000万円を額面とする「債務弁済契約公正証書」を作成することにした。そして、その後、平成19年3月頃、「知り合いの設計事務所オーナーの関係する物件です」と言って5件の不動産リストを佐藤が提示し、「売値で10億円以上の物件の運用を任されているので、9月から大々的に販売をかけて一旦社長に返済するので、今年いっぱいの保険料を立て替えてもらえませんか」と懇願したので佐藤の要請を呑んだ。佐藤が担保に供した生命保険の加入については、保険金の受取人を当時は学生だった娘(高橋予帆子)にしており、佐藤に不測の事態が起きて保険金の支払いが起きた場合には、それを返済に充てるということを佐藤は公正証書に明記した。債権者はその時、娘を巻き込むことへの佐藤なりの責任や覚悟を感じて、佐藤を信じることにしたようだが、事実はそうではなく債権者を騙すために便宜的に娘を利用したに過ぎなかった。佐藤は債権者を信用させるために娘に連帯保証をさせるようなことを平気でやったのである。
ただし、債権者が佐藤を提訴した際に、娘は自己破産手続きを取り審理の途中で被告から外れるという事態が起きたが、実際にはこれまでにいくつもの例があるように娘の申立は実態を一切反映しておらず、事実上の詐欺破産に当たるものだった。
佐藤は家族を蔑ろにしていたとしか思われないが、債権者に負った債務を責任を持って返済するという認識が全くなかったようだが、とはいえ、佐藤が死亡した今、佐藤が残した債務は家族や親族が責任を持って清算するしかない。佐藤は言い訳もできないような嘘をついて債権者を騙し、あるいは債権者の資産を横領して無断で売却する犯罪まで実行して債権者に莫大な損害を与えている。その責任を全うして問題を解決するのは家族や親族にとっては重い負担になるだろうが、一つ一つ解決していくしかない。一度は佐藤の連帯保証をした娘は、佐藤がいかに悪事を働いていたかを少なからず承知していたはずだが、債権者や関係者と前向きに話し合いを重ねていくことが問題解決の一番早い方法ではないか。(つづく)