疑念噴出『情熱社長』―後藤悟志氏の脱税や常習賭博を知らなかったでは済まない

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マスメディアやインターネットの世界には「ステルスマーケティング」(通称ステマ)と言って、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミを装う宣伝活動があり、消費者を欺く卑劣な行為とされている。同じマスコミでも週刊誌や月刊誌などの紙媒体よりも放送の世界での規制が厳しく、告発を受け、目に余るような場合には放送倫理機構(BPO)が取り上げ、番組を流した放送局に対して「見解」と「勧告」をした場合には、その放送局がBPOから受けた事実を広く公表する義務が課されている。

写真:後藤悟志

本誌が取り上げて来た太平エンジニアリングの社長、後藤悟志氏がインターネットの「情熱社長」と題する社長インタビューサイトに掲載されているのが分かったのは、令和4年に入ってからの事だった。このインタビューがいつ行われ、いつ掲載されたのかは運営会社(「Cheer」代表者平塚ひかる氏)が公表していないので不明だが、仮にインタビュー当時では事実が表面化していなかったために見逃してしまったとしても、事実が表面化した時点で、インタビュー記事の掲載の諾否を検討することは、媒体の姿勢として、またコンプライアンス上からも非常に重要と思われる。

「情熱社長」が謳っている「掲載されている社長とは」を見ると、「ヒトを大切にしている」「ブレない理念を持っている」「若者を育てたいという想いを持っている」等の指針が載っているが、後藤氏の場合は、そのいずれも適さない、どころか、全く逆の感覚や発想で会社を経営し、また個人的にも脱税や常習賭博等の疑惑を強く持たれるような行為が常態化していた、という点は決して見逃してはいけないはずだ。
「情熱社長」は同社のHP(ホームページ)で有料での掲載を明記しているが、記事には「広告」を表記していないので、見ただけでは分からないし、たとえ宣伝広告の扱いをしているとしても、自ら掲載に規制をかけるべき対象者であるかどうかの見極めが必要なことは当り前である。

後藤氏の素性については、すでに本誌で取り上げているので、読者はお分かりのことだが、後藤氏の麻雀賭博は長期にわたっており、同氏が学生時代からプロ級の腕前であったことを、6年間も傍で一緒にやっていた小野敏雄が暴露している。麻雀の相手をさせられるのは会社の管理職や下請会社の人間たちだから、最初から戦闘意欲はそがれているに決まっている。週に1回以上は欠かさないという常習賭博がそれだけの長いキャリアであれば、後藤氏の古くからの交友関係を当たれば、すぐにも事実は判明するはずだ。そうした事前の裏付け取材をほとんど行わないままインタビューを敢行し、後藤氏から聞いた話をそのまま(あるいは体裁を整えて)記事として掲載するのは、前記した「情熱社長」で謳う理念とは実体がおよそかけ離れていても構わないと言っているに等しい。それは、冒頭に挙げた読者や視聴者を欺く行為に他ならず、営利とはいえ、特に目に余るものは判明した時点からでも掲載を検討すべきものと考える。
まして、後藤氏の場合は、私腹を肥やすために架空請求を頻繁に行って経営する会社に損害を与える背任行為を厭わず、あるいは下請会社に払うべき代金を抑えるためにファクタリング会社を設立して支払代金で振り出した手形を月に2%以上の手数料で割引くことで、一部を事実上還流させるなど、下請会社いじめと言って過言ではない締め付けを行っていたともいう。後藤氏の金銭欲は異常で、儲けが大きいと飛びついた不動産投資でも、上げた利益を適正に申告しなかったばかりか、トラブル回避のために反社への利益供与をするなど、違法行為さえ平気で行うというとんでもない悪事が小野によって露見したのだ。
もし「ブレない理念を持っている」という点に当てはまるとすれば、それはまともな経営理念ではなく、正反対のブラック企業と呼ばれても当然の手法であり、その点で後藤氏には確かにぶれは無いに違いない。

これは、取り上げる土俵が違うかもしれないが、日本においては、消費者庁が2011年から不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)のガイドライン「インターネット消費者取引に係る、広告表示に関する景品表示法上の問題点、及び留意事項」を公表しているが、事業者が口コミサイトやブログに口コミ情報を自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させ、その口コミ情報がその事業者の商品・サービスの内容または取引条件について、実際のもの、または競争事業者に係るものよりも著しく優良、または有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となるとしている。この原則を援用すれば、情報を提供する側が最も心しなければいけないことは、過剰な口コミ情報は厳に戒めなければいけない、ということである。
「人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした」に該当するとして軽犯罪法に抵触する可能性があるという。何よりも一流企業のオーナー社長が反社を利用した脱税や常習賭博に溺れるとは絶対に許されるものではないはずだ。(つづく)

2022.03.17
     

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