《裁判官は、努めて外部の世界と拘わらない様に行動する。確かに、裁判の公正中立を守るため、司法の独立や中立は必要だと思う。しかし、それによって人間性が歪んでいくようでは本末転倒と言わざるを得ない。しかし、その閉じられた内部は明治時代からのピラミッド型の人事システムが残っていて、出世ばかりを気にする裁判官が溢れている。日本の裁判所は、最高裁長官をトップとしてその腹心である最高裁事務総長が率いる事務総局が、全国の裁判官を人事や組織の圧力で支配している。正に明治維新の頃の小説に出てくる役所の様だ。この様な人間が多い裁判所に正義は無く、公正で中立な裁判は望めないだろう。1日も早く裁判所組織の改革を進めるべきだと思う》
《鈴木はこれだけの裏切りをしている以上それなりの報復を覚悟するべきだ。鈴木は、A氏に会った時の事をまるで忘れたかのような言動をしている。要するに、自分に都合よく記憶を無くした振りをしている。時によっては、A氏に対して「大変世話になった」とか、「一目も二目を置いている」と言っているが、心から思っていない事は、その前後の言動を見れば明らかだ。人の親切を弄ぶことは、最低の人間がする事だが、鈴木にはそんな理屈も通じないだろう》
《鈴木は株取引に関して、特に「合意書」契約締結については、その存在を三者間以外に知られないよう注意を払っていたと思う。他に相談させないようにする事は、あらゆる詐欺に共通する常套手段だからだ。鈴木は「合意書」の締結時点で、既に株取引の証となる「合意書」の証拠隠滅をどうするか思案していたはずだ。鈴木本人は手を下せないので、西に10億円の報酬で破棄させようと画策した。報酬の額から言っても、「合意書」の重要性が見て取れる》
《鈴木には信頼できる仲間がいないため普段から金を与えて関係を繋いでおき、利用するべき時が来たら困難な仕事を依頼する。そして、自分にとって邪魔になってくると平気で排除する。しかも自分の手を汚すことなく同じように金で繋がっているだけの人間を利用する。鈴木の周囲には青田の様なハイエナ紛い奴ばかりが集まっている。鈴木という奴は所詮そんな生き方しかできないのだろう。いずれは、そんな輩に足元を掬われることになる》
《西は、自分が仕掛けた罠に嵌ってしまった。鈴木を利用してもう一度立ち直ろうとしたのだと思う。A氏の期待に応えようとしたのだろうが、その考え方が大きな間違いだった。大恩あるA氏に危険な人間を近づけないようにガードするのが自分の役目だという事に気が付いていない。目先の資金繰りばかりを考えていて、善悪の見極めが出来なくなっていたのだろう。悪知恵の働く鈴木は西の心の内を見透かして、西を唆した。西に同情の余地はないが、ミイラ取りがミイラになった事は確かだった》
《A氏の人の好さに付け込んで、鈴木は様々な口実で多額の金を詐取した。中でも株取引においては詳しい知識を持っており、その知識を悪用して、株の買い支え資金をA氏に出させ、その金を西が受け取り鈴木が仕込んでいる株に買い注文を入れさせて暴騰させる。誰でも確実に利益が得られるやり方だ。本来であればA氏が買い支えとして出した資金を経費として差し引き、残金の利益を三人で分配する約束であったが、裏切った鈴木は全額独り占めするという暴挙に出てしまった。我欲の為の許せない裏切り行為だ》
《鈴木のような奴でも、この社会に生きている限り人の心は持っていると思うのが自然だ。鈴木には妻も子供もいる。愛人もいるようだが、日頃その人達と、どの様にコミュニケーションを取っているのだろうか。金だけを与えるだけでは身内の心は誤魔化せないと思うが、家族たちも鈴木の様な質の悪い感性の持主ばかりだとしたら、鈴木と一緒に地獄に堕ちるのも自業自得だ》
《昨今の裁判官は、本来目指すべき「正義」がおざなりになり、出世にばかりに囚われている。全ての裁判官がそうだとは言わないが、自らの考えをしっかりと持ち、正義を貫く優秀な裁判官もいるのだろう。しかし、そんな裁判官は上級の裁判官になれないのが通例らしい。それでは、優秀で正義感の強い裁判官は裁判所という組織に嫌気がさして辞めてしまうだろう。裁判官が不足している原因がそこにある。裁判所は立法府、行政府から独立している事で国民から信頼されていたはずだが、まさか、裁判所組織が一番堕落しているとは考えてもいなかった。国民を誑かす裁判所組織は早急に解体して正道に戻すべきだ》
《志村化工株相場操縦事件では、西と共に鈴木も東京地検から本命視されていたにも拘らず、西が口を割らなかったお陰で、利益をしっかり得ながら逮捕を免れた。西の逮捕前に、「西会長の言う事は何でも聞きますから私の名前を絶対に出さないで下さい」と土下座して頼んでおきながら、裁判が終結すると、掌を返すように西を蔑ろにし、邪険にしだした。この時の鈴木にとって西は利用し尽くして邪魔な存在でしかなかったのだろう》(以下次号)