M.Pが仕掛けたシャピーロファンド詐欺は架空の人物を作り出して、「シャピーロの投資に資金を出せば、2年足らずで10倍の利益を得られる」という大ぼらを吹いて投資家を騙したものだ。そして、M.Pの投資話に乗った西義輝が、さらに身近の知人たちを誘い込んだために被害額は総額で100億円にも膨らんだ。
投資にはリスクが伴い、大きな見返りにはより大きなリスクが伴う。投資家達はそれを承知の上で投資を行う。自分達の資金が有効活用されると信じて。しかし、事実はそうではなかった。M.Pの近くにいた人物からの証言では、投資した多くの資金は裁判など、本来の案件とはまるで関係の無い物の費用に充てられ、投資家に約束していた企業の価値を上げる為に使われたのはごく一部だった。そして資金が底を付き始めるとまた新たな投資話を投資家にしていた。M.Pと被害に遭ったある投資家の間で交わされた書面が手元にあるが、それによるとM.Pが10倍の買取保証をしたのは平成21年5月のことで、投資家はT社という会社に9000万円を、さらに3か月後の8月にも1億3000万円を投資した。この時に10倍の買取保証を更新した(ただし、翌平成22年2月に買取保証は3倍に変更されている)。そして、その資金は瞬く間に消え、わずか半年後の2月26日に新たにE社という合弁会社を設立して上場させることを約束し投資家から1億円を受け取った。このE社はM.Pが持つシミュレーション技術と実際の工場の量産技術を掛け合わせた新しい価値を生み出す企業として話題性もあり、設立発表時には盛大なパーティも催され多くのプレスも集まっていた。だが、わずか数カ月後にE社は解散している。投資家に詳しい説明もなく、M.Pが言ったのは「相手側に非がある」とのことだけだった。内部関係者からの話ではM.Pの持つ技術というものが詐欺同然の紛い物だったという。ちなみにこのプロジェクトに必要だと言われ半ば強引に集められた第一線で活躍していた日本の技術者達も始動前に職を失うことになってしまった。多くの人間に損出を与え、その人生を狂わせながらM.Pは次の策を練っていた。それから約半年後の8月、資金が尽きたM.PはN社によるM&Aを進めると称して、投資家に追加の投資を勧め、投資家は1億円を追加で出すことになった。
ここまでの経緯を見ると、投資家はベンチャー企業に総額4億2000万円を投資して、M.Pが約束通り3倍の買取保証を実行すれば、投資家が受け取る総額12億6000万円、およそ8億4000万円の利益を得ることになっていた。しかし、この時からM.Pの迷走、というより詐欺の実態が明らかになり出したのだ。M.Pはそれから約3年間も配当をしないまま投資家との連絡を疎かにし、来日して投資家の前に姿を現したのは平成25年7月30日のことだった。当然、M.Pはそれまでに連絡を疎かにしていた経緯を詫びつつ、投資の状況について説明をしたが、その説明を言い訳がましく聞いていた投資家は当然、M.Pに苦情を申し入れ、経緯を分かり易くまとめたレポートを作成し提示するよう求めた。それから間もなくしてM.PからはN社がバッテリー会社や液晶メーカーとのM&Aの話があり、また同年中に2500万円~5000万円の配当を出すと言った話が投資家にもたらされたが、M&Aの話が本当に実態のあるものかどうかは不明だった。M.Pの悪行はこれが始まりではなく、終わりでもない。韓国、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中華圏、中東と変えつつ、関わる投資家も個人から海外、機関投資家と規模を大きく変えながら詐欺を働いている。次回ではさらにM.Pの詐欺の実態を明らかにする(つづく)