4月初旬に民間調査機関を始め新聞やテレビが、高崎の市街地にあるライブハウスclub FLEEZを運営していた有限会社フリーズ(以下、単にフリーズという)が破産したと一斉に報じた。それらの報道によれば、いずれも負債総額は約1億円であるとしているが、これは事実に反している。また破産したのは法人であるフリーズだけでなく、代表者の下平研と側近の役員の本多裕和も自己破産手続きを取っている事実も、一連の報道では触れていない。「破産」は「財産を債権者に分配し、会社が消滅する手続き」を指す。
ところが、フリーズの負債総額は約1億円などではなく、少なくともライブハウスを開設していた高崎のビルのオーナーに対して未払賃料等3億円以上の債務を負っているのだ。賃貸契約の借主はフリーズであるから、それが負債額に反映していないとすれば、下平が故意にオーナーに負っている債務を隠している、つまり粉飾していることになるから、場合によっては下平ほかが刑事責任を問われる事態も十分に有り得るのだ。
昭和63年に創業したライブハウスclub FLEEZは、同市出身のギタリスト布袋寅泰を始め多くの有名ミュージシャンが出演するなどして、群馬県では老舗として知名度の高さを誇っていた。平成30年9月期には売上高6000万円を計上していたといい、令和4年6月に一時閉店したが、新型コロナに伴う非常事態宣言の影響や入居していたビルの売却等を理由に挙げ、創業の地である前橋市に移転し再開を目指していたものの、事業継続を断念したとしている。しかし、フリーズおよび運営責任者である下平研を巡る実情はそのような単純なものではない。前述したとおり、ライブハウスを開設していたビルのオーナーに負っている債務は総額で3億円を優に超えており、その債務はフリーズがライブハウスを前橋から高崎に移転させた直後の平成16年から発生し累積しているから、下平がフリーズの暦年の決算を粉飾してきた疑いが濃厚なのだ。決算の粉飾は明らかな犯罪行為で、今後、破産管財人により重大な粉飾が明確になれば、単なる破産手続きでは済まない事態が起きる。また、億単位で決算を粉飾している中で金融機関から借り入れをしているならば、事は粉飾決算のみに留まらず、金融機関に対する詐欺行為となりかねない。金融機関はフリーズがそこまで債務を負っていないと信じて融資を決めているにもかかわらず、実際には多額の債務を抱えていたのであり、当時金融機関がその事実を知っていればフリーズに対して融資はしなかったであろうことは想像に難くない。冒頭記載の報道からすると、下平は未だ粉飾のことを申告していないと思われ、今後管財人の調査によって事実が明らかになっていくと思われる。破産手続きに至ってもなお下平が故意に債務を隠そうとした態度は破産法上の説明義務・報告義務に違反するものであり、免責を得られなくなる可能性が高くなるし、また対応があまりに悪質であるため刑事事件として立件される可能性も高い。下平と側近の本多が自己破産の手続きを取った事実が伏せられている点も、負債額の誤魔化しに関係している可能性を考えれば、不透明さが一層高まる。
下平は昨年の11月以降オーナーとの面談を3回も一方的に反故にし続け、ライブハウス事業の破綻と自身の破産手続きに至る実情をオーナーには一切告げていなかった。過去にオーナーが下平に図ってきたさまざまな厚意を全て無にするに等しい下平の対応はあまりも卑劣で、20年に及び累積した債務から不当に逃れようとして密かに破産手続きを進めた可能性が高い。下平と本多は債務返済の保全のために億円単位の保険に入っていると言っていたが、実際には6000万円のみで、それも昨年10月に失効させていた。
下平が前橋市内で開設していたライブハウスを高崎市内に移転したのは平成15年12月のことで、同月28日にビルのオーナーと賃貸契約を交わし、さらに年が明けた平成16年1月中旬には賃貸部分を広げて地下フロアのほぼ全てを借り受けたが、ライブハウス開設の工事に着工するとしながら、それが先延ばしになり、翌年1月中旬になっても工事は遅れた。そのために、ビルのオーナーは契約の一部を改めざるを得なくなった。またこの時から既に敷金や賃料といった契約金の未払が発生していた。フリーズはその後も賃料を期限までに払わない、もしくは一部しか支払わないといったことを繰り返し、その不足分が未払として毎月累積していったのである。すでにこの時点でもオーナーがライブハウスの存続に協力していなければ、下平は行き場を失いライブハウスの開設断念を余儀なくされたはずだが、一方で、オーナーが当時の松浦市長から高崎市の活性化に協力して欲しいとの要請を受けていたことから、オーナーは、ライブハウスが周知のとおり観客を多数動員して街の活性化につながっている点に目を向け、賃貸契約は踏まえつつも毎月発生する賃料の不足分を債務として計上するのみで契約の解除等をすることなく、ライブハウスの維持に応じてきた。
しかし、フリーズが賃貸契約を交わした当初から、契約金の未払や賃料の不足が発生し累積していったことは重大で、フリーズはいつでも契約に基づき明け渡しに応じなければならない状況に陥っていたのだ。
それでもビルのオーナーがフリーズ(下平)に対して未払分の回収を迫ったことは一度もなく、一部にはフリーズが運営資金に窮した際に、オーナーが資金を融資する場面もあったことから、オーナーと下平との関係は単なる貸主とテナントという関係を越えていた。そして、契約から10年前後を経た平成24年と同26年に債務総額と返済方法を確認する書面を作成し、併せて公正証書も作成するに留めた。下平は2通の公正証書で約束した返済を一時的には履行した。しかし、それも長くは続かなかった。未払の累積が膨らむ一方の中で、平成30年以降は毎年末に未払分を相互に確認する確約書を交わす手続きを繰り返すほどに債務は膨れ上がった。
一方の下平も、オーナーのそうした対応に応えるように、賃料のほんの一部は支払いつつ、ほぼ毎月のようにライブハウスの運営状況やフリーズの経営状況についてオーナーへの連絡と報告を行っていた。それでオーナーも下平を信用し、賃料の滞納による未払金額が増加しても、確約書を交わすことで許容し続けていた。その対応は、オーナーがビルを売却した2年前の令和4年7月以降も変わることなく、フリーズがライブハウスを高崎から前橋に移転させて再稼働するための金銭的な援助も惜しまなかった。もっとも、下平がオーナーに報告していた中身が、今となっては正確さを全く欠いていたことが判明しており、不都合な事情をオーナーの耳には決して入れていなかったことが窺える。
そして、下平がそうした関係に自ら亀裂を生じさせたのが昨年の11月から12月にかけてのことだった。下平がオーナーとの面談の約束を反故にして連絡を絶つ事態が突然に起きたのである。面談の約束反故は3度も繰り返された。いったい下平に何が起きたのかという実情が全く分からないオーナーは下平に電話をし、また下平を介して紹介を受け、ビルの売却にも関わった「エルグ」の林浩幸という不動産業者にも事情を聴くなどしたが、林も「事情が何も分からない」と言い、一方で下平とは連絡がついてオーナーの所に一緒に出向くとしながら、約束の当日になると林一人が来て下平は現れないという事態を招いていた。昨年末に林が一人で来てオーナーと下平について話をした際に、林は下平がオーナーに負っている債務について「自分も仕事をして一部でも穴埋めする」と言った趣旨のことを口にしたが、それまでにオーナー所有の不動産の資料をいくつも預かりながら、一つも売買の商談にさえ持ち込めなかった人間がそんなことを言っても、現実味はほとんどなかった。というよりオーナーには林がその場しのぎで言っているようにしか聞こえなかった。ちなみに林の不動産会社は法人の体裁は整えているが、母親と2人だけで経営しているのが実情だから、中身は個人の自営業者と変わらない。難局に直面して、出すべき結果が出せなくても中途半端な言い訳で済ませてきた経緯が林にはあるに違いない。しかし、フリーズ(下平)の問題に限っては、そんな無責任な対応は一切通用しないことを林は認識すべきなのだ。
下平が電話連絡には一切応じず、また林には一緒に出向くと言いながら面談の当日になってすっぽかすなどの悪質な対応に業を煮やしたオーナーの関係者が下平の自宅に出向いても、下平は居留守を決め込んで対応しなかった。林もまた同様に下平の家族に会って事情を聴こうとしたが、下平の母親はオーナーに対する債務の連帯保証をしていながら、ひどくあいまいな態度を取り続けた上に「弁護士と話をしてください」などと無責任に言い放ったという。ところが、それを言われた林は母親に何も言い返すことができなかったという。林は、オーナーに対する義務として、下平の置かれた現状や母親の立場を、その場でしっかりと話さなければならなかった。事の詳細はともかく、下平が説明すべきことを何一つ言わずに密かに破産手続きまでして逃げ隠れしていることは母親も実感しているはずだ。現状では下平を庇うようなことは却って息子の立場を悪くさせることにしかならないから、母親なら息子を諫めるべきで、しかも債務の連帯保証をしている立場であれば、何故自分のことでもあるとして対応しようとしないのか、と。林の対応はあまりにもだらしなく、他人事でしかなかったのだ。
こうした経緯を前にして、さすがのオーナーも我慢の限界を超えてしまい、止むを得ず法的な手段に訴えるしかない、と手続を進めていた矢先にフリーズ並びに下平と本多が破産の手続きを取り、それが認められたという通知が裁判所から届いたのである。そしてそれが、冒頭に挙げたように報道により事実が公になった。
下平がオーナーに実情を話してきたことで、その時々に生じた問題を解決する道が開かれたこともあった経緯を、下平は何故思い返そうとしないのか。オーナーが下平との関係を良好に維持し、ライブハウスの存続についても、他に優先して可能な限りの協力を惜しまずに対応してきたのは間違いないことだった。
ビル売却後の下平への支援に当たっては、林が窓口になり下平への様々な協力を依頼してきた経緯があったが、実際には林自身もオーナー所有の不動産を「売らせて欲しい」と常々口にしていたが、過去5年間に具体的な話を持ってきたことは一度もなく、高崎のビル売却にしても、話だけが先行して一向に売却先が決まらなかったためにビルの売却計画が遅れるなど、林の仕事への取組みに不信を抱かせた。また、林は自分が窓口になると言ったにもかかわらず、ライブハウスの前橋への移転と再開について、林に何回か進捗状況を尋ねても説明が不透明で、高崎の閉店から1年以上が経った昨年9月になっても入居先が決まっていない事態に加え、ライブハウスの再開に伴う事業計画等に対する下平自身の意思について、様々な疑念を抱かせることになった。しかも、そうした事態に陥っている状況すら下平と林はオーナーに明確に説明ができなかったようである。林はオーナーに毎月1回は必ず下平を交えた3人で協議の場を持ち、報告と相談を怠らないと言っていたが、自分から約束した毎月1回の協議さえいい加減な対応に終始した。本来であれば、下平が連絡を絶つような事態に陥る前に、窓口の林は対処すべきだし、毎月1回の協議をちゃんと設けていれば下平が連絡を絶つような事態も起きなかったのだ。もちろん、下平自身もオーナーに詳細を説明して問題を解決する相談をすべきだったのだが、下平はオーナーへの連絡を絶つという最悪の選択をしてしまった。オーナーと林が面談した際に、林は「下平と本多を連れて来られるのは私しかいない」とまで言って2人を連れて来る約束をした。ところが、下平が約束を反故にする事態が繰り返されると、林もまた下平の問題には自分は関知していないかのような、まるで他人事のような態度を取り始めた。ビル売却後の下平及びフリーズの窓口になってきたのが林である限り、それはあまりにも無責任が過ぎる。下平がオーナーとの面談を反故にした際、林はオーナーに対して、下平から事情を詳細に聞いて、最低でも下平を連れてオーナーと面談をして説明する機会を作るとした約束を一向に果たそうとしなかった。さらに、オーナーの関係者が群馬に出向いて下平の自宅を訪ねるに当たっては、林は行動が緩慢で自分の仕事を優先したために、無駄な時間を浪費してしまった。林の対応は非難を受けて当然であろう。
オーナーに何一つ事前の連絡も報告もなしにフリーズの破産手続きを取り、そして自己破産の手続きをしたという下平と本多の行為はあまりにも無責任であり、決して許されるものではない。現に、というか4年ほど前の令和2年10月にかけてフリーズは「NO LIVE NO LIFE」の標語の下にクラウドファンディングを立ち上げ、1249人の支援者から約730万円もの貴重な資金支援を受けていた。下平は、今、自身が取っている行動がオーナーはもちろん、club FREEZを愛し支援をした支援者たちまで裏切っているという強い自責をもって説明責任を果たすとともに、今後どのように償うかを明確にすべきではないのか。
これまでに触れた通り、フリーズは粉飾決算をしている可能性が高く、それは金融機関に対して虚偽の事実を述べて借入を行ったという詐欺行為にまで発展する。金融機関がこれをどこまで問題視し、事件化するかは金融機関次第ではあるが、破産し借り入れを返済しない以上、金融機関としては相応の対応を取らざるを得ないであろう。さらに、粉飾決算の事実を今もって破産裁判所に申告していないことで、下平も本多も免責不許可となる可能性が高い。下平と本多はオーナーの信頼を裏切り、取引先に迷惑をかけて破産手続きを申し立てたが、本人たちの思惑に反して何ら成果を得られないどころか刑事事件化で破滅の道をたどる可能性を高めている。20年以上も何から何まで世話になりながら一方的に連絡を絶って逃げ隠れしている下平と本多にとって、単に信用の失墜だけでは済まなくなるのは明白で、刑事事件化は当然の報いであろう。そして、林もまた取引先からの信用を失墜させるのは必至だ。(以下次号)