〔実体のない法人に隠匿された巨額資金〕
鈴木義彦の指示で紀井義弘が取得株の全てを売りにかけ、獲得した利益の大半を海外に流出させた。それは明らかに外為法に触れる犯罪行為だったが、表向きには取得株の所有者が外資系投資会社だったから、目先で金融庁やSECに咎められることはなかった。しかし、すでに触れてきたように外資系投資会社は実体のないペーパーカンパニーであり、鈴木が日常で関わってきたフュージョン・アセット・マネージメント社に依頼してオフショアに用意させたものだったから、何らかのきっかけがあれば、すぐに株式の取得経緯や売り抜けにより獲得した利益の海外流出の実態が発覚したに違いない。
鈴木がオフショアに用意させたペーパーカンパニーは全部で100社前後はあったという。仕掛ける銘柄ごとに複数を用意したことになるが、利益を獲得すると相次いで休眠あるいは消滅させていった。利益を確保するまでのプロセスは鈴木にとって、まるで“地雷原”を行くような感覚を持ち続けていたろうが、数多くの仕手戦で約470億円という巨額の利益を海外に流出させた上に、それをプライベートバンクで預金、運用で利回りを上積みしてきた結果、鈴木の隠匿資金が1000億円を超えていると言われる今も何一つ変わらない。
利益総額470億円という事実は、平成18年10月に紀井が売り抜けた株それぞれで獲得した利益を銘柄ごとに明らかにしたものだったからウソはなく、実際に紀井はそれを「確認書」にまとめて裁判所にも提出し、自ら証言台にも立った。それから10年以上を経た今、前述したように元本が2倍以上に膨らんでいる。
鈴木は、隠匿した巨額の金を守ろうとして必死になった。平成18年10月16日にA氏と西の3者で協議の場を持った際に「合意書」に基づいた株取引を全面的に否認し、獲得した利益についてもわずか50億円とか60億円などと言って誤魔化そうとしたが、西が破棄したはずの「合意書」をA氏に提示され、さらに紀井が利益の明細を明らかにしている事実を知らされ、最初に仕掛けた宝林株だけは「合意書」に基づいていたことを認めつつ、A氏と西にそれぞれ25億円ずつを支払い、さらにA氏には別に20億円を支払うと約束したのだった。
しかし鈴木は和解後にA氏宛に手紙を送り、「西が最初の宝林(JAS)のきっかけを作った」と認めたものの支払いを留保したうえで「(利益獲得のプロセスは)私一人が立案した」と書いていたが、鈴木が2人を騙して海外に利益の大半をプールさせることを計画したということを自白したようなものだった。
(写真下:青田光市)
鈴木はA氏に手紙を送りつけた後に所在を不明にして逃げ回る中で、交渉の代理人となった青田光市と弁護士の平林英昭が「合意書」「和解書」の無効を強調するためにありったけのウソを並べ続けた。その一つとして「470億円は西が作った話で、紀井は言っていない」とも反論していたが、紀井が作成した「確認書」が裁判に提出されており、あまりに苦し紛れであることは明らかだった。
また「和解書」が無効であるとする理由に強迫や心裡留保という有りもしないことを挙げたが、中でもA氏の背後に暴力団がいるかのごとき話さえ鈴木はもとより青田、平林も出すようになった。しかし、そのような話は一度もなく、逆に鈴木が青田経由で稲川会習志野一家のNo.2の楠野伸雄の配下を事あるごとに使っていながら、そのことで都合が悪くなると、青田が「一切付き合いはなかったことにしてほしい」と楠野に口止めをしたり、今回の訴訟でも証人申請をしたほどだった。鈴木たちは「自殺した西から聞いた」として確認不能の話を法廷に持ち込んだのだった。その西に対しては青田が尾行を繰り返していたために、西の自殺に大きく影響していたとの指摘が側近の関係者たち数人からあった。鈴木、青田の二人には“史上最悪”という声が関係者だけでなく国内外の驚くほど多くの読者からも届いている。
鈴木がA氏に負っていた債務約28億円(元金)についても、鈴木は「完済した」と主張してA氏への支払いを拒んだが、A氏は数多くの証拠に支えられていたにもかかわらず裁判は敗訴となった。関係者によると、「A氏の代理人は鈴木に就いた長谷川幸雄弁護士に怯えていたのではないか」という。開廷中の審理のさ中に長谷川から「うるさい」「黙れ」等と言われ、A氏側の弁護士はか細い声、蚊の鳴くような声で論述し、いつも震えているように見えたという。鈴木の周辺では身内であっても今まで何人もが死亡し、あるいは行方知れずになっていることから、原告の弁護士が鈴木の人間性にひどく怯え、また弁護士自身が「身内から弁護を断るように言われていた」と明かしていた。結果的にA氏の代理人は証拠類を適切に活かせず、また多くの陳述書等も何故か提出しなかった。
鈴木が訴訟でA氏を退けることに成功したとはいえ、それで全てが終結したのではない。むしろ、鈴木が海外に隠匿している巨額の金の存在が浮かび上がり、それを必死で守ろうとする鈴木の一挙一動にも多くの注目が集まったとさえいえるのだ。
本誌にも数多くの情報が寄せられる中で、有益な情報については精査をして、裏づけが取れ次第記事化し情報開示を継続させる。真実はどこまで行っても蓋をすることはできない。
また、鈴木がおそらく一番恐れている国税、司法当局も密かに情報収集を進めている模様だ。鈴木は裏金隠しにあらゆる方法を講じているに違いないが、すべてを闇の中に隠し続けることは不可能なはずだ。プライベートバンクの人間、株の関係者、旧エフアールの出資者、元社員ほか関係者等、誰一人として鈴木を良く言う人間はいないから、どのような形で綻びが生じてもおかしくないのである。また、海外からも日増しに多くの情報が入っているので、これも同様に裏付けを取りながら記事化することで読者の期待に応えていく。
鈴木はもちろん、鈴木の親族もまた何から何まで世話になった人間に対して恩を仇で返すようなことをしても平然としている。そのようにみると、鈴木だけではなく青田、平林、杉原、長谷川など代理人弁護士にも批判の目が向いているのは注目すべきことだ。(以下次号)