〔鈴木は警察署の呼びかけさえも拒否した〕
本誌取材班は、鈴木と西による株取引及び鈴木による海外隠匿資金の実態について真相を確認することに加え、裁判が終結してからは敗けるはずのない裁判が何故敗けたのか、というテーマについても取材を進める中で、鈴木および青田光市、茂庭進、鈴木の実父や青田の義兄に当たる杉本夫婦に関係者たちは取材をかけたが、一人もまともに応じることはなかった。杉本の妻(青田の実姉)を地元の警察署で呼び出してもらった際にも、一旦は来署すると言っていた実姉が後に電話をしてきて「弟が行く必要はないと言っているので」と言って断る場面もあった。肝心の鈴木の所在は一向に掴めず、住所地にも何度か出向いたが、家族すら住んでいる気配はなかった。青田や茂庭ほかの関係者も応対に出たのはわずかで、殆どがインターフォンへの応答すらなかった。
青田は前述したように習志野一家のNO.2とは当時で20年来の付き合いがある密接共生者で、本誌でも触れたとおり、犯罪行為を繰り返して赤坂マリアクリニックを乗っ取った男である。青田は鈴木の裏方としていくつもの汚れ役を果たしてきたので、これまでは鈴木にとっても重宝な一面はあったに違いないが、逆にみれば鈴木を抜き差しならないところまで追い込んでいる張本人ともいえる。「和解書」で鈴木が約束したA氏と西への支払いを青田が反故にさせた(?)ことで、鈴木の自制心が完全に切れてしまったのではないか。
青田は習志野一家の組員たちから「上野の会長」と呼ばれており、いい気になっているようだが、それも鈴木からもたらされる金で威勢よく振舞っているにすぎず、やっていることが犯罪であるのは赤坂マリアクリニックの乗っ取りを見れば分かる。この乗っ取り事件で、青田にかけられた嫌疑は威力業務妨害、窃盗、有印私文書偽造・行使、詐欺、横領、強迫、公正証書原本不実記録など数知れない。このことが原因で院長の根岸重浩氏は2人の娘とも疎遠になったようだ。また青田の義兄も青田とは20年以上前から縁を切っているかのような話を表向きにはしているが、青田は自身の悪さを恥じるべきだ。
鈴木の実父徳太郎は、西が設立したファーイーストアセットマネージメント(FEAM)社で毎月60万円の給与を取っていた。西によれば徳太郎は平成12年から同13年にかけて約1年間勤務していた模様だが、その時期は鈴木が相次いで株取引を仕掛けた時期でもあり、父親として息子の悪事を見聞きしてきたにもかかわらず、息子を叱責することはなかったようだ。FEAM社で鈴木は愛人に50万円の給与を出させたりベンツを購入させるなど横着な要求をして7億円以上を消費しており、それもA氏が出していたことを徳太郎はどう考えるのか。鈴木の所在が不明になってから、利岡正章が1年以上も足繁く徳太郎の家に通い、鈴木とA氏の協議実現に協力するように説得を試みたが、徳太郎には積極的に息子に働きかける様子は見られなかった。徳太郎が利岡の前で鈴木に電話をしても鈴木は一切出なかった。鈴木が独り占めした利益のほんの一部を徳太郎の住むマンションの購入資金や生活資金に充てていることで、何も言えない父親になってしまっていた。
ちなみに、先ごろ本誌宛に実父と同じマンションに住む住人と思われる人物から投稿があった。それによると、過去に怪文書が郵便受けに断続的に入れられていたことがあって、それは西の自殺に関わるものだったが、西を自殺に追いつめた鈴木の父親がこのマンションに住んでいて気味が悪いという趣旨だったという。そのマンションには別の階に鈴木の妹と子供が住んでいる(この部屋も鈴木が脱税した金で購入したと側近は言う)。妹はエフアールの社員と結婚して子供ができた後に離婚したが、前夫の姓(徳田)を名乗っている。投稿者には怪文書が入れられていた当時は何のことか分からなかったが、本誌の記事を読んでようやく分かったとのことであった。西の自殺が鈴木の実父の住むマンションの住人にも波紋を広げていたことが、この投稿によって分かる。鈴木が引き起こした事件は一人鈴木の問題ではなくなっているようで、取材を進めると鈴木の家族が住む相模原市内のマンションでも同様の事態が起きているようで、2人の子供たちにも影響が出るのではと思われる。
西が自殺した直後にA氏と西の妻と子息(内河陽一郎)、そして利岡が徳太郎の自宅を訪ね、西の自殺について思うところを尋ねるとともに鈴木との面談設定を改めて徳太郎に依頼した成り行きから、徳太郎が娘(鈴木の妹)を同行してA氏たちと最寄りの警察署に向かい、同署の課長が応対する中で妹が鈴木に電話をすると鈴木が電話に出た。そこで妹が鈴木に事情を伝え、課長が電話を代わって「すぐに来て欲しい」と言っても、鈴木はさまざまに理由をつけて「都合がつけられないので、A氏には明日電話します」と言って面談を拒否してしまった。鈴木と長谷川が作成した「質問と回答書」に基づけば、鈴木にとってはA氏と西に強迫され「和解書」を作成したというのであれば、警察署に訴える絶好の機会であったはずではないか。しかし、鈴木は言を左右にして面談を拒むだけで、翌日以降もA氏に連絡を入れることはなかったのである。鈴木の言動がいかにちぐはぐなものであるか、それを目の当たりにした徳太郎は一言も発しなかった。利岡は、徳太郎の家を訪ねる度に伊東で獲れるキンメダイほかの手土産を持参したり、いろいろな書籍を届けていたが、数か月後には徳太郎が「息子に協力してあげてくれませんか」と頼むことが1度や2度ではなかったようだ。また鈴木の所在確認では2か所の興信所に頼んで2年以上で数千万円の費用をかけていたが、そうした経緯を品田裁判長は無視して「7年間も放っておくことはおかしい」と一方的に判断したのは不可解である。
ちなみに、鈴木は「和解書」の作成経緯について、西が香港で殺されかけた殺人未遂事件の容疑者にされそうになったことから恐怖感が募り、署名指印しなければその場を切り抜けることができなかったと主張したが、その日のやり取りを完璧に録音したテープが見つかり、鈴木の主張がウソであることはその音源で証明される。また、鈴木と青田が謀って西を頻繁に尾行させたのは何故だったのか。しかも尾行を繰り返していたのは、どうやら青田が目をかけてきた反社会的勢力の人間であった疑いもあり、西の自宅前でも張り込んでいたことが何度もあったようで、西が気を抜けばいつでも不測の事態が起きるような緊張感を与え続けたようだが、そこまで西を追い込まなければいけなかったのは、西が何らかの真相を暴露することを恐れたからではなかったか、とも思われる。このように、実際にはA氏や西が鈴木を強迫したのではなく、鈴木が自分にとって不利な事実を知っている西を強迫していたに等しかったと言える。裁判官が強迫や心裡留保を採用して「和解書」を無効と認定したのが大きな誤りであるのは、こうした一つ一つの真実に目を向けなかったからと言わざるを得ない。
A氏と鈴木の双方の関係者の多くが言う。
「貸金返還請求訴訟の結果は途中経過でしかない、ということは何度も繰り返して言ってきたが、鈴木には真相を語らせ、犠牲を強いた関係者に対しても相応の謝罪をさせなければ事が決着したことにはならない。そのための方法として、裁判官に対する弾劾裁判を始め、弁護士に対する懲戒、そして鈴木自身に対しても可能な限り法的措置を講じて行く」
鈴木に対する取材が長らく続いてきたが、今回、取材班は初めてA氏に接触することができる可能性が出てきたこともあって、A氏の心境や鈴木に対する取り組み方等を関係者から聞いた。
関係者によると、「平成18年10月16日に和解協議があり、その後の1週間の間にも鈴木からA氏に何度も電話があり、また10月23日には鈴木が一人でA氏の会社に来て、A氏や西に約束したことを追認していた。ところが、その後に青田光市と平林弁護士を代理人に立てると言い出してから、鈴木の態度が豹変した。具体的な経緯は分からないが、恐らく和解協議のさわりを聞いた青田が出しゃばり、『そんな金を払うことはないよ、俺に任せてくれれば何とかするよ』とでも言ったのではないか。その言葉で鈴木の強欲に火が着いて、一気に事態が変わり今日まで来てしまったように思う。和解協議後に鈴木がA氏に電話を入れたやり取りで、株価の買い支えでの損失が約58億円あり、それを差し引いて3等分しないといけないと言っている話が録音されていて、何人もが聞いている」という。
問題の「質問と回答書」についてA氏は、「鈴木のウソは、もともと平林や青田が構築したウソのシナリオに沿って鈴木が主張してきたことで、すぐにも綻びが生じるような幼稚なものだったが、この乙59号証は明らかに今までと違っていて、それまでの証言や陳述の不備をもっともらしく修正するために作成したものであり、長谷川はA氏が暴力団関係を金主元にしたプロの金貸しであるという事実無根の前提を作り、鈴木にその点を強調させ、鈴木も同調した。これは絶対に許せないことです。A氏は友人知人に貸し付けをしたが、金融は本業ではない。金を貸して人助けをした時に催促をしないのはA氏の実家の家訓になっているくらいで、A氏もそれを守ってきた。困っている人を助けることで、実家は古くから「仏」という屋号がついていた。A氏の父の葬儀に西を含め友人知人が列席した際に、送迎のタクシー運転手や地元の人たちから屋号を聞いて驚き、その話を鈴木も西から聞いていたからA氏の人となりを十分に承知していたはずだ。鈴木は手形、借用書では次から次に融資を依頼し、また在庫で処理できなかった宝石や絵画等も買取を依頼した。しかも絵画についてはA氏に買ってもらいながら一度も持参しなかったが、別の債権者の所に担保で入れていた事実が後日判明した。それでもA氏は一度も催促をしなかった。A氏がその時に鈴木の本性を分かっていれば金は貸さなかったし宝飾品等も買い取らなかったはずだ。ところが鈴木が「質問と回答書」で述べたのは、あろうことかA氏が債務返済を二重に強制したということだった。A氏は、そんな卑劣なことは一度もしたことはないと断言できる」と双方の多くの関係者は言う。そして、今後の取り組みについても聞くと、鈴木に対しては徹底的に真実を明るみに出すことになると思うと関係者は言う。
「裁判は残念ながら、原告側の弁護士の対応に大きな落ち度もあって想定外の敗訴となったが、判決が全てではない。もちろん、可能な限りの法的な措置は取っていくが、問題の地裁判決については、例えば公開でシンポジューム(討論会)を開いて、何故、裁判官たちが事実の認定を誤ったのか、何故、訳の分からない判決を下すことになったのかについて、討論者だけでなく聴取者からもさまざまな意見を出してもらい問題意識を高めてもらうという意見が多い。方法はいくつもあるのではないか」という。
関係者の話にもあったが、裁判官を裁判にかける弾劾裁判の制度があるが、これは民間版のようなものと言える。鈴木や長谷川が法廷で行った論述だから、もとより異存はないに違いない。
「多くの関係者が、国内外の一人でも多くの人にこの事件の真相を理解して欲しいと考えています。裁判は敗訴になったが、裁判に未提出の多くの証拠の中で未だ公にしていないものもある。そうした証拠からも判断すれば万人にも分かるはずで、和解書の文面にもある通り、鈴木も西も不正を認めている。従って和解書の作成経緯が強迫や心裡留保には当てはまらないことは、和解協議後に鈴木がA氏に送った2通の手紙でも十分に理解できるはずである。ただ、この頃には青田や平林の悪知恵が加わっているが、少なくとも手紙の文面が真実を証明している。『大変お世話になった』とか『男として一目も二目も置く人には今までほとんど会ったことがない』という文言で判断できるはずだ」
と関係者は言い、鈴木が隠匿し続けている1000億円を超える金はいずれ国庫に没収されるに違いないから、折からの新型コロナウィルス対策で大型予算が組まれる中で有意義に使われるなら、A氏がA氏への出資者と協議をするのはもちろん必要だが、それが最適、最良ともA氏は考えているようだとも言う。(以下次号)