〔鈴木義彦の巨額利益独占〕
平成11年2月、東京オークションハウス(以下「TAH」という)の経営者である西義輝に、宝林(現サハダイヤモンド)株800万株の売却情報が持ち込まれ、西は調査の結果、スポンサーであるA氏に宝林株800万株の買取り資金3億円の相談をした。A氏は資金3億円の用意を約束し、買取り決済日(5月末)までに資金を西に預けた。
宝林株800万株を取得後、西と鈴木義彦は株価維持の資金に不安を覚えA氏に今後の資金協力を要請した。
二人は、宝林株だけでなく他の銘柄でも証券市場で高値で売り抜け利益を出すという計画を話し、鈴木が一人熱弁を振るってA氏を説得にかかった。そして鈴木は「これが成功しないと、二人(鈴木と西)ともA氏に今までの借金の返済ができない」とも告げ、A氏は鈴木と西の説得に応じた。そこで西が「合意書」の作成を提案し、その場で簡単ではあるが最低限の要件を整えた書面が作成されることになった。
「合意書」は、A氏、西、そして鈴木が株式の売買、売買代行、仲介斡旋、その他株取引に関することはあらゆる方法で利益を上げる業務を行うことを第1の約定とした。株式の銘柄欄は空白で、ただ「本株」とだけ書かれていたが、それが宝林株であることには疑いがなかった。また、「今後本株以外の一切の株取扱についても、本合意書に基づく責任をそれぞれに負う」ことや「合意書」に違反した行為が判明したときは「利益の取り分はない」と明記して、西と鈴木が継続的に株取引を実行する意思表示がなされた。
株価維持のための資金協力をA氏に仰いで巨額の利益が生み出されたにも拘らず、鈴木と西はA氏を裏切り、利益を折半する密約を交わしてA氏には株取引の情報を伝えなかった。
鈴木に指示されて取得株式の売りを全て任されていた紀井義弘は後日、「平成18年までの約7年間で得た利益の総額は少なくとも470億円以上」として書面にしたが、鈴木はA氏に相談することなく勝手にそのほとんどを外資(ペーパーカンパニー)名義で海外に流出させ、さらにスイスのプライベートバンクに集約させていた。 (以下次号)