今、倉持茂が日常どういう状況にあるか、倉持の家族や姉夫婦はよく承知している。2年半ほど前に会社役員が3人の暴漢に襲われた事件が、実は倉持が教唆したものであり、倉持がこのまま謝罪の意志さえ見せないならば、会社役員は告訴に踏み切るということもよく分かっているはずだ。
ところが、倉持の家族や姉は何を考えているのか、誰もが無関心を装っているようなのだ。会社役員の関係者だけではない、以前には倉持の身を案じた友人が姉の洋子の自宅を訪ねても非常に素っ気ない対応をして、「私は関係ないから、帰って。二度と来ないで」とまで言って友人を追い返したというのである。洋子も倉持と同じくまともな人間ではない。自分勝手な理由をつけて正確に真実を見ることが出来ない。姉であれば弟を𠮟りつけ、過ちを正させて謝罪させるべきだ。
姉の洋子は倉持が若い頃から素行が悪く、散々に迷惑をかけられ関係したくないとでも思っているのだろう。しかし、仮にそうであったとしても、友人を倉本同様に扱うというのはあまりにも失礼が過ぎる。しかも会社役員の関係者も友人も、それぞれに倉持がこのまま会社役員に謝罪さえせずに逃げ回っていれば、この先は遠からず殺人未遂事件の教唆犯として捜査当局に逮捕されるのが目に見えており、そうなれば倉持だけではなく、倉持の家族も姉の家族も、そして身内全員が世間から非難を浴びて“犯罪者の家族”という烙印を押されてしまうと2人の子供や姉の家族にも影響が出るはずだ。
倉持が会社役員に負っている債務はあまりに巨額で、すでに倉持が単独で処理できるような状況にはないに違いない。その実情は姉の洋子も少しは承知しているようだが、そうであれば、なおさら「関係ない」と言って済まされるものでもないことは十分に分かるはずである。
先ごろ、会社役員は倉持と倉持の債務を連帯保証していた母親(あい)に対して貸金返還の訴訟を起こしたが、倉持も母親も期日に出廷しなかったため、すぐにも結審して会社役員が請求した全額が認められるという判決が下される予定であったが、判決の当日に申し立てをして来たようだ。そして今後も倉持に対する訴訟が予定されている中で、倉持にはいくらでも会社役員に連絡を取る機会があるはずなのに、倉持は一切動こうとしない。そうした倉持の対応に嫌気がさして、会社役員が最後に倉持を見限り、債権を第三者に譲渡することになれば、倉持の家族も姉の家族(夫の實)も、そして親族全員も関係者になってしまい日常の生活にも影響が出て非常に厳しくなることはすぐにも分かるはずだ。
倉持は、今、群馬県内で反社会勢力の手先になり、主に闇金融をやっているようだが、会社役員だけではなく別の人間が被害届や告訴をする可能性も大きい。倉持の身を案じようとする気配すら姉の洋子は見せないというが、いくら倉持がどうしようもない人間であっても、最後に頼るのが家族であり、最後まで見捨てないのもまた家族であることを踏まえると、姉夫婦の対応はあまりに冷酷で全く非常識という印象しかないと関係者全員が言っているが、倉持本人が殺人教唆で告訴された時には姉夫婦は地元にはいられなくなるのは当然だと思われる。(つづく)