《心裡留保とは「意思表示を行なう者が自己の真意と表示行為の内容との食い違いを自覚しながら行う意志表示」と定義されているが、鈴木の主張では和解書を「書きたくなかったが、書かされた」という事になるのだろう。その理由に挙げたのが「脅迫され、監禁されそうになった」からという。平林弁護士はどの判例から捻り出したのかは不明だが、恥ずかしくもなく、よくこんな主張が出来たものだ。品田裁判長も裁判官として、このような主張を支持できたものだ。何が強迫で、何が監禁に当たるというのか。それに、強欲で狡猾な鈴木が脅迫や監禁で70億円もの巨額な金の支払約束をする筈がない。一般の真面目な人がヤクザに脅かされて書いたものではないのだ。品田裁判長は何処を見て裁判を指揮していたのか》
《バブル崩壊後の金融混乱期、大手銀行が不良債権の処理に手一杯で零細企業の融資など見向きしなかった時期に、悪魔のような頭脳の持主で以前に闇金で儲けた資金を元手に零細企業向けローンを考案し、一躍ノンバンクのトップに躍り出て、30歳そこそこの若さで数千億と噂される莫大な富を築いたアンダーグラウンドの怪物がいた。やり口は相当あくどくて「カネ貸しは回収が全て」と言って恐るべき回収法を考案したそうだ。しかし、やはり最後はさんざん利用した国家権力に手痛いしっぺ返しを食らった。2005年秋、金融庁は公正証書作成の為に事前に白紙委任状を取っておく手法は重大な貸金規制法違反に当たるとして業務停止命令を発動した。さらに2006年の貸金業規制法改正が止めを刺した。借主が利息制限法を超えた分の利息の返還を求める所謂「過払い金請求」が代理人弁護士を通して殺到し、ローン会社はあっけなく倒産。本人は自己破産し、以来消息を断ったと言われている。しかし、密かにユダヤ系の金融コンサルタントと契約して架空名義の海外口座とペーパーカンパニーを複数使い、1000億円の資産を分散して隠し通したらしい。そして大物政治家にも莫大なカネを掴ませ、周到な根回しをしていて「資産の海外逃避くらい朝飯前」だったという。結局金の力で見事逃げ切ったようだ。闇社会の裏表を知っていて、カネさえあればこの世に不可能なことは無いという事か。鈴木の場合とは似て非なりだが1000億円の資産というところは同じだ。鈴木にはそれだけの裏社会との繋がりがあったかどうかは不明だし、鈴木にはそこまでできる筋金は通っていなかっただろう。但し、この件でもタックスヘイヴン地域が大きな役割を果たしていることは気にかかる》
《西の自殺の背景には、株の利益分配金に固執し、合意書の約束を守るべきだったという自責の念が明らかにあったと思う。当たり前のことだが、鈴木も西も、合意書の約束を厳守し、真摯に対処すべきだった。もし最初からちゃんと行動していたなら、西の自殺はなかったはずだ。巨額の金銭が絡むことから、金への執着心が不幸を招く一因となったと言えるだろう。鈴木自身もいずれ、罰として降りかかってくる不幸について深く考えざるを得ない時が来るに違いない》
《鈴木は、「質問と回答書」(乙59号証)でA氏に会う前に散々虐められていた金融屋とA氏を同等な人間と誹謗しているが、「お前はそれでも人間か」と言いたくなる。高利に追いつめられ、命を失くす寸前だった時に助けて貰った事は忘れたのか。しかし、この時の金融屋も当然の事をしていただけで、金を借りて期限に返済していない鈴木が悪いのだ。鈴木は自分が正しい事をした事がないのではないか。いつも、相手を悪く言うが、その原因を作っているのは全て鈴木なのだ。こんな奴を許しておくと、騙されて不幸になる人が増える。鈴木を懲らしめる方法は無いものなのか》
《鈴木の存在はまさに百害あって一利無しだ。鈴木に関わった人間が10人前後も不審死を遂げているという。利用され、騙されて、全て鈴木の犠牲になったのだ。鈴木に対して怨みつらみを残して自殺した西もその一人だ。全てが私腹を肥やす為に騙しや裏切りを厭わない鈴木には、大きな報いが待ち受けているに違いない》
《鈴木も波瀾万丈な人生を送っているように見える。列島改造論、オイルショック、バブル景気、ブラックマンデー、バブル崩壊、リーマンショック。国内、国外の経済が激動した時代だ。鈴木は他人とは違って巨額の資産を掴んだ。他人を裏切って隠匿している資産を残しても、家族や身内は喜ばないだろう。鈴木が死んだ後の処理にも困るだろう。鈴木の事だからあらゆる準備はしているだろうが、そうは上手くいかないと思う。鈴木が死んだ後に他人が介入してくるのは目に見えている。その人間が善人だと良いが、鈴木のような悪人の可能性は高い。だとしたら家族が大変な事になるのは間違いない。今のうちに処理をすることが家族にとって一番いいことだ》
《鈴木ほど、感謝の気持ちが無い人間は、他にはまずいないだろう。A氏から受けた恩を鈴木は完全に認識していたはずだ。鈴木から和解成立後に送られた2通の手紙には「多大なお世話をいただきました」「心から尊敬する人物」といった言葉が綴られている。周囲にはA氏の援助により成功した多くの人たちがいたことを考えると、品田裁判長がなぜ「強制された合意」や「心裡留保」という鈴木の主張を採用したのか、その理由が誰にも理解できないのは当然のことである》
《A氏と、西、鈴木が合意書を締結して株取引を始めた時から、鈴木は裁判沙汰になる事を予想していたのだろうか。大事な事は出来るだけ西を間に入れて打ち合わせをしたり、西に「1人でワンルームで頑張っているので長い目で見てやってください」と言わせたりして、出来るだけA氏と2人だけで会う事を避けていた。それが裁判で「株の話などしたことがない」「西が言った」「西に言われた」という発言に繋がるのだとしたら恐ろしい男だという事になる。その頃から旧知の長谷川元弁護士に指南役を依頼して法を免れる方法をアドバイスしてもらっていたのかも知れない。長谷川元弁護士は共犯かも知れない。そう考えれば納得できる。そうでなければ、これだけ鈴木の作戦通りに悪事が運ぶはずがない》(以下次号)