種子田益夫が死亡していた。昨年10月13日のことだったという。死因は病死ということだが、2~3年ほど前には80歳を超えて臓器移植のために渡米まで予定していたようだから、種子田本人にはまだ死ぬ覚悟などなかったのだろう。
「種子田は2年前の夏に臓器移植の手術を受けると言ってアメリカに渡航する準備をしていた。ところが、突然それが中止になって、本人はえらく気落ちしていたが、予定されていたドナーに問題が起きたのではないかという話だった」と関係者は言う。その後も日本国内に留まり、恐らくは愛和病院グループのいずれかに入院し治療を受けていたものとみられる。本誌が入手した情報によると、種子田の死亡地は四国地方とのことだが、高知にはグループ内の高知総合リハビリテーション病院がある。

(写真:種子田吉郎)

直近で種子田の名前が取り沙汰されたのは、5年ほど前の平成27年5月に種子田が警視庁に被害届を出した山口組元最高顧問による恐喝事件だった。元最高顧問の故瀧沢孝(芳菱会元総長)は、本誌でも取り上げたように永らく種子田の“後見役”を名乗り、種子田がトラブルを起こすたびにその処理をしてきた人物で、そもそも種子田にとって被害届を出せる関係にはなかったはずだ。瀧沢は警視庁の調べに対して「ガセネタだ」と容疑を否認したというが、種子田が身勝手にも瀧沢を排除するために捜査の現場と何らかの取引をしたのではないかという憶測すら飛び交った。しかし、それよりも種子田自身がどれほど好き放題の振る舞いをしても瀧沢の協力で身の安全を保証されてきた、というお互いの関係を一切無視して取った行動こそ、種子田の独りよがりの本性が現れていると言っても過言ではない。そして、吉郎も父益夫の血を色濃く引き継いでいる。

種子田の訃報についてネット情報を追ってみたが、情報はなかったずる賢い吉郎のことだから密葬で済ませ、周囲には一切知らせていないのではないか。しかも調べてみると、長男の吉郎以下親族全員が相続放棄の手続きをしているという。種子田の病状を睨みながら、長男の吉郎は父益夫の死亡後を見据えて周到な準備を進めていたのではないか。
しかし、そうであれば、吉郎の考えは根本から間違っている。本誌がこれまで掲載してきた特集で何度も触れてきたように、吉郎が愛和病院グループの理事長に就いてきたのは飽くまで父益夫の指示によるもので吉郎は完全なダミーであって、吉郎自身が自分の力で資金を調達して買収し、経営を維持してきた病院は一つもない。債権者たちから種子田益夫が融資を受ける際に「いつでも病院を担保にする」と言い、受けた融資金で病院を買収していった。その経緯からすると、当然、愛和病院グループはいずれも種子田益夫に係属している財産であるということだ。種子田はその実態を隠蔽するために関根栄郷という悪徳弁護士を使って巧妙に工作してきたのである。そうした経緯を吉郎は百も承知で、債権者たちから身をかわすために相続放棄という手続きを父益夫の死と同時に取ったに過ぎない。吉郎の妻の幸の実家は新潟にある病院で、愛和病院グループに帰属している。吉郎の弟の安郎、妹の佐居益代も病院グループから高額の報酬を得ていながら、病院グループは父益夫とは何の関係もないなどという弁明が果たして通用するのか。極めて卑劣な話で、相続放棄は親族全員による詐欺行為であると言えるし、以前から愛和総合病院の初代院長を務めた故村山良介氏を始め多くの病院関係者が種子田益夫がオーナーであると証言してきた。

病院の買収資金の調達で、種子田益夫は債権者たちに「病院を売却してでも返済を実行します」と約束してきた。「息子の吉郎は理事長に就いているが、本人も『いつでも病院をお返しします』と言っていますので、間違いありません」とまで言っていたが、債権者がそれを実行させようとする段になると、種子田は「公共性があるのでタイミングを図りたいと言って担保提供を引き延ばし続け、揚げ句には所在を不明にし続けた。その後、債権者が種子田に会った平成22年12月には「今後は働いて返します」とまで言い出したのだ。そのような経緯がありながら、吉郎は父親の債権債務には一切関係はないし関知もしないという横着な対応を取り続けてきたが、吉郎ほか親族全員が種子田益夫と同じ詐欺行為を働き続けてきたに等しい。。
種子田の側近だった田中延和が、吉郎を説得して債権者に電話を架けさせたことがあったが、その際に吉郎は「社長も周囲の方もお金持ちばかりだから、そちらで何とかしてください」と言ってすぐに電話を切ったのである。父益夫が多額の債務を返さず長い年月が過ぎている事実、債権者たちから融資を受けるに際して病院を担保にすると言ったうえで売却で返済原資を作るとまで言っていた事実を知りながら、その債権者に対して発する言葉ではない。しかも一方的に電話を切っておいて、債権者がかけ直しても吉郎は電話に出なかった。それだけでも吉郎に社会性が全くないことがよく分かる。
医師の資格もない吉郎が、どうして理事長に就き、現在に至っているのか。自力で病院を買収することもできない吉郎が、何故、続々と病院をグループの傘下に収め経営を維持することができたのか。そうしたいくつもの疑問に、吉郎を始め親族一同には答える義務があるはずで、父益夫の債務は一切関係ないという言い草は筋の通らないものだ。

種子田が死亡した今、それで種子田がしでかした不始末が終結する、と吉郎は胸を撫で下ろしているかもしれないが、何の責任も果たしていないところで逃げ得が許されるはずはない。
吉郎自身が病院の収入から毎月6000万円という大金を父益夫に提供してきた事実、父益夫の債務に係る金利等の返済で吉郎自身が反社会的勢力と接触した事実、そして何より、大学を卒業して間もなくの時期から、父益夫が買収した病院グループを束ねる「東京本部」の中枢に収まり理事長職に就いていった事実等、上げて行けばキリがないほどに吉郎が父益夫のダミーであるという実態が浮かび上がってくる。吉郎は、前科前歴が多数あって社会的には制約を受けざるを得ない父益夫の代わりに永らく理事長に就いてきた故に、重大な責任があるということなのだ。本誌の特集記事に掲載している情報を共有している複数の市民団体(オンブズマン)も種子田益夫の不当な財産形成、しかも極めて公共性の高い病院という財産を相続の対象外に置くという詐欺行為に憤りを持ち、吉郎を始めとする親族全員を追及する態勢を整えつつある。吉郎は法的に守られていると言うかもしれないが、これまで述べている通り病院グループは父益夫による吉郎以下親族への生前贈与であることは事実なのだ。

今後、父益夫がいなくても吉郎が理事長職を継続していくことは可能なのか。冒頭にも記したように、吉郎は周到に準備を進めているのかもしれないが、自らの責任と義務を真っ当に果たさぬ限り、吉郎自身の社会的信用が回復することはない。(以下次号)